北米開教区

リモート法要について~開教振興協会カンファレンス

[報告]  2026/10/13

2021年2月15日深夜、浄土宗開教振興協会のカンファレンス「コロナ禍における寺院の対応」に参加、画面上とはいえ他開教区・開教地の先生方に再会し共に発表を行いました。以下は、北米の発表内容です。

「コロナ禍における寺院の対応」として、北米でもZoomとFacebookを使いリモートサービスを行っています。「宗教活動としてリモートサービスは是か非か?やるべきかやらざるべきか?」という問題には様々な議論があると思いますが、北米ではやる以外の選択肢がありません。地所や駐車場・家屋賃貸などの副収入はなく、檀家制度のない社会環境であり、その時々の宗教活動への寄付以外に収入を得る道がないからです。極端な例ですが、鮫が泳ぐのを止めたら死んでしまうように、「寺が宗教活動を止める=収入が入らなくなる」という意味を持ちます。このことを前提として最初に申し上げ、報告として3点、1)カリフォルニア州ロサンゼルスの感染拡大状況、2)パンデミック下の活動状況、3)リモートサービスについて、お話しいたします。

1)カリフォルニア州ロサンゼルスの感染拡大状況について

2021年1月下旬のデータによると、アメリカでは累計の感染者数が約320万人で死者数は約3万8千人です。カリフォルニア州は日本列島とほぼ同じ大きさで、人口は約4千万人。カリフォルニア州南部のロサンゼルス郡という行政区(ロサンゼルス市やハリウッド・サンタモニカなどを含む)を対象とすると、広さは関東一都六県とほぼ同じで、人口は約1千万人です。累計の感染者数は約100万人で死者数は約1万6千人です。一方、日本の人口が約1億2500万人で感染者数が約40万人・死者数は約6千人となっています。亡くなられた方々を数字で表すのは不謹慎ですが、こうして比較するとアメリカの感染者数・死者数がいかに多いかが分かると思います。

2)パンデミック下の活動状況 

2020年3月中旬にロックダウンに入り、スーパーや病院など生活に関わる業種以外の営業と市民の外出が制限され、シカゴとラスベガスへの春彼岸出張は中止となりました。ロサンゼルスの春彼岸も参詣者を本堂に招くことができず総監・主任のみで勤め、シカゴ・ラスベガスの方々の回向も併修しました。最初の約1ヶ月、総監・主任とも極力会わないよう一日交代で出勤し、寺と周辺の清掃・消毒と共に、近隣の治安不安に備えておりました。ロックダウンが解除されると、寺院・教会は10名以下の人数でのサービスが許可されました。その後5月には寺院・教会の活動再開のガイドラインが発表され、「収容人数の25%までなら参詣者が集まっても良い」とされました。「これで何とか7月のお盆はメンバーと共に勤められる」と喜んだのも束の間、独立記念日を機に再び感染拡大によりガイドラインは撤回され、本格的な活動再開は持ち越されました。こうした状況から、7月のお盆の法要からZoomを使ってリモートサービスを始めました。その後、秋彼岸・十夜・大晦日の一時間念仏会・元旦の修正会・1月の御忌と、定例法要はすべてZoom とFacebookによるリモートサービスで勤めています。

3)リモートサービスについて

僧侶は読経・念仏・法話を行いますが、良くも悪くも目の前の人々の反応を見ながら法要を進め、法話をすることに慣れていると思います。特に法話では、雰囲気を和ませるためジョークを言ったりしますが、「クスッ」という笑いが聞こえれば嬉しいものです。しかし、2020年からは読経・念仏・法話のすべてが、まったく新しい体験に感じられました。

まずショックを受けたのは、マスクで顔半分が隠れた人々に対して法話をした時、さらにリモートサービスを始めてから、コンピューターの画面に並ぶ顔の数々に向かって法話をした時です。「説教師殺すに刃物は要らぬ、あくびの一つもすればいい」という言葉があるそうですが、自分の前に人々の顔があるとはいえ、マスクをした人やコンピューター画面上からは、まったく生の反応さえ得られません。ここから気づいたことは、「人と話す時、これまでいかにその場の雰囲気とか、表情とか、含み笑いとか、体のあらゆる感覚から得られる情報を頼りにしていたか」ということです。

その点、リモートサービスは残酷です。目の前には誰もいません。平らなコンピューター画面があるのみで、参加者の反応は分かりません。さらに、大鏧の音の響きやお香の香り等、五感で味わう現場の雰囲気を画面の向こうに届けることはできません。情報を伝える手段としてあるのは、本堂から数秒遅れで受信者に届く「音と映像」のみ。例えば、読経・念仏中に息継ぎすれば、画面の向こうに届く情報としては「ただ音の途切れた一瞬」となります。発信者としてはそうならないよう、「声」という音の情報を極力途切れずに発信し続けねばなりません。法要中は一瞬一瞬、常にアクセルを吹かし続けているかのようです。カーレースに例えれば、スタートしてすぐトップスピードに入りそのままゴールまで走り続けるかのようで、神経も体力も消耗します。

リモートサービスを重ねて分かったことは、まず自分の意志・感情・言葉・態度のすべて、100%を画面にぶつけることです。読経や念仏、法話であろうと、「相手の反応を得たい」という利己的な欲求に負けず、自分のすべきことに意識も体も集中して、画面に向かって全力を出し切ることです。このことは、自分を視聴者の身に置いて考えればよく分かります。自分が視聴者として参加した場合、どんな集まりであれ画面から何のエネルギーも感じられなければ、クリック一つでその場を離れてしまうでしょう。ですから、発信者側には崖から飛び降りるかのような怖さがあり、毎回心を奮い立たせて臨んでいます。

さて、浄土宗で最高の宗教体験は「共に念仏を称える」ことですが、リモートサービスはまったく異なる宗教体験です。無知なもので実際にやってみるまで、ズーム参加者の念仏が本堂にいる自分の声と同時にスピーカーから鳴り響くものと思っていました。そのためテストでは、受信者側のマイクをアンミュートにして一緒に念仏を称えてみました。すると音声情報がそれぞれ遅れて飛び交い声はまったく揃わず、ただの雑音のようになりました。携帯電話で二人同時に話すことができないことを考えれば、当たり前です。発信者の希望、つまり「全員の念仏の声が聞きたい」という欲求を優先し全員アンミュート状態で法要を行うと、受信者にとって最も肝心な宗教体験である「念仏」を称えにくくなることが分かりました。

人々が一堂に会し勤める法要は全員が共に味わうことのできる宗教体験ですが、リモートサービスでは、すべての受信先で一人一人が味わう個人的な宗教体験となります。このことから、「受信者一人一人にとって、いかに良い宗教体験としていただくか」、すなわち「いかに念仏を称えやすい状況を提供するか」を優先すべきことを学びました。参詣者を本堂に迎える法要をお客の集まるレストランだとすれば、リモートサービスは「お寺の出前」です。そこで、法要中は受信者のマイクはミュートにして参加いただいたところ、「本堂からの声という一つの音声に自分の声を重ねるだけなので、念仏が一緒に称えやすくなった」との感想を受けました。

社会的制限下での宗教活動を続ける中、他宗教・他宗派の動向を見て改めて感じることがあります。それは「時と場所を選ばず誰でも行える念仏が、いかに他に類のない、平等で、実践的な仏道修行であるか」ということです。コロナ禍により、社会生活では他人と物理的に離れていなければなりません。信徒の方々には、それぞれ「個人での念仏」に励んでいただくよう、”Please do not ever physically distant from Nembutsu!”(お念仏からだけは離れないで)と呼びかけています。檀家制度のない当地でその呼びかけに応えていただくためには、何より信徒一人一人との信頼を築くことが不可欠です。まずは、寺が現状で可能なかぎり活動していなければ、信徒に安心いただけません。そして「個人での念仏」を呼びかけるだけでなく、寺がまず、そのお手伝いのための行動を起こさねばなりません。

そこで、2020年4月より、毎週土日夕方にFacebookで生配信を始め、お勤めと英語・日本語での簡単なメッセージの配信を続けています。開始当初の反応は単なる動画視聴に留まるものでした。Facebookは配信中の視聴者数が表示されますが、時には0という場合もあります。誰もいない本堂で一人、携帯電話の画面に向かって語りかけながら、「自分は一体何をやっているのだ?」と悩むこともあります。昨今は有難いことに、視聴者も毎週画面で本尊に対面するかためか、「ご本尊に」と果物やお米等お供物を届ける方々や、遠隔地から「ご本尊のお供えに使って下さい」と小切手を送られる方々が見られます。

リモートサービスが進むと人々はそれに慣れ、「もう寺院に集まって拝む必要もないから本堂も要らない」というお寺不要論の風潮が出てくるのでは?という懸念もあると思います。しかし、先に紹介したように、お勤め生配信を通じ自宅で「個人の念仏」を行う習慣が徐々に「お供えを届けたい」という思いを生み、「供養」という形で寺のご本尊との関りとなって現れる場合もあります。念仏を称えるという「正定之業」に、自宅で自分の意志で、主体的に関わる習慣から「供養」という助業が生まれることを、改めて学ぶ思いがします。非常事態下で大変でも、一人一人の信徒に念仏を称えていただくよう努めることが、やがてどのような形であれ寺院のご本尊との結びつきを育むようです。

第11回開教公開カンファレンス~コロナ禍における各国の状況と寺院の対応~ – YouTube

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