ハワイの日系二世に光を当てた写真家ブライアン佐藤氏追悼
[その他] 2020/3/5
写真作家 ブライアン 佐藤氏追悼
ワヒアワの桜の満開を告げるニュースを新聞が伝えた夕刻、私はブライアン佐藤氏の訃報を受けた。氏は療養先のサンフランシスコの病院で64年の生涯を終えたのである。おそらく年毎にブライアンが見たであろうその桜は、彼の離別へのはなむけであったのであろうか。
氏はアメリカ人として、初のニコンの伊奈信男賞を受賞[第37回(2012年度)]した栄誉ある写真家である。彼のライフワークは二世の生き様から学び、彼らの姿を映像として捉えることで、彼らの姿を追い求めてハワイ各島を長年に渡り訪れ、 その姿をカメラのレンズを通して捉えたのである。
氏はその展示作品のタイトルを「GOKUROSAMA ごくろうさま:ハワイの日系二世」と題した。
そこには人生の先輩方に対する深い敬意と、彼等に対するあくまでも謙虚な彼の姿勢が読みとられる。
彼の被写体には多くの浄土宗信徒がおり、私たちにとり、なじみ深い人々の姿であった。従って、その映像は単なる映像ではなく、そこに私たちは生きたその人々の息吹きや思い出を感得することができたのである。
現在、存在しないハワイ島 旧ワイナク浄土院のがらんどうの本堂空間に佇む、同院゛寺守り″のエラ藤枝夫人の姿など 極めて印象深いものがあるが、同時に、ハワイ浄土宗の開教の有為転変を沁々と感得させる映像でもある。
ハワイ浄土宗開教百年(1994年)に当り、ハワイ浄土宗教団は『ハワイ浄土宗 開教百年史』(新保義道著)を刊行したが、表紙の別院本堂の写真は、ブライアンの好意により撮影された映像を用いている。
氏の作品”ハワイの日系二世”は、ホノルル、東京、ロサンゼルス、パリ等、世界各地で展示されてきたほか、ナショナル ジオグラフィク誌等にも掲載され、多くの人々の心を捉えてきた。
氏が心臓手術を受ける前、私に電話し、「先生、死んだら葬式を頼みます。」と告げてこられた。
その声を私は、死と直面した彼のいのちの叫びと厳粛に受け止めた。
いま、ブライアンは去ったが、氏の快活な笑顔、その人柄、撮影にかけた情熱等々、数々の想い出は人々の胸から消えないであろう。
その作品を通じハワイ日系社会を顕彰したブライアンに、私たちは
“ブライアン、本当にいろいろと有難う!ごくろうさま”と告げたい。
合掌
文 原 源照
(写真は授賞式に於けるブライアン佐藤氏)